Archive for the ‘レポート:CDプレーヤー’ Category

Nmode X-CD5

水曜日, 11月 30th, 2022

今回はNmodeの新製品CDプレーヤーをレポートさせていただきます。

【次から次へと畳み掛けてくる圧倒的サウンド。】

このX-CD5は(型番から類推される通り)以前にレポートさせていただいた「X-PM5」の相棒・相方となるCDプレーヤーとなりますが、結論から述べますと音の傾向やキャラクターにも共通性が認められ、ある程度似通ったサウンドに仕上げられているようです。
(よろしければ先にX-PM5のレポートをご覧ください。)

X-PM5のレポートはこちら↓
http://www.digitalside.net/?p=1211

主要なワードをピックアップしても「鳴りっぷりが良くマッシブ」「PM5はハイスピード・シャープさよりもドライブ感・アグレッシブ感が先頭に立つ」「透き通るようなサウンドステージといった印象は薄く、比較的に各パートがひしめき合っている印象」あたりはCD5でも共通の印象を覚えるポイントであり、
このX-CD5とX-PM5をセットで使用すると、これらがより強調されますし、あまり色濃くさせたくない場合はあえて(CDプレーヤー・アンプどちらかは)別の組み合わせにすることで別のシナジー効果を生み出せることになります。

これらを踏まえ、いつものようにレポートさせていただきたいと思います。

■Nmode [X-CD5]
●一聴してすぐに抱く印象は「圧倒的な突進力」「非常に押し出し感が高く、音離れが良好」といった感じです。ゆえに、やはりアンプと同様にドライブ感・アグレッシブ感が先立つ印象となります。
●レンジ感はアンプほどではないものの少し低重心傾向ですが、(比較対象のLUXMAN D-03Xが非常に特に高域方向がワイドレンジなので)大きく気になるものではありません。
●切れ・抜け・スピード感も上々ですが、シャープさやエッジ感を前面に出す傾向ではないので「解析的」なサウンドを好む方はケーブルなどで少し補正してあげた方が良さそうです。
●サウンドのテンション感・パッション感・ダイナミックさがとても高く、(前述の通り)解析的というよりは“情熱的なサウンド”傾向にあたるかと思われます。1音1音も全体的に熱を帯びていて「寒色・硬質」傾向ではありません。
○1音1音は分析的でシャープな傾向ではないので、組み合わせ次第ではやや粗っぽく感じられることがあるかもしれません。(→とある組み合わせだと非常にマッチすることを確認していますので、また別レポートできたらしたいと思います。)
黒江的好み度:A+ (~とある組み合わせでSになりそうです。)

…ということで、現状ではシャープ・解析傾向ではLUXMAN D-03Xをメインにし、アグレッシブ・情熱傾向では今回のNmode X-CD5をメインに使い分けることになりました。
鳴らすスピーカーや、鳴らしたい傾向で選択肢が変わり、音の出口・出方が面白いように変わるのは正にオーディオの面白さ、奥深さだな…と思わせてくれます。

ぜひ、色々な選択肢や組み合わせからご自身に合ったものとめぐり会ってください。

LUXMAN D-07X

木曜日, 9月 1st, 2022

今回はLUXMANの新製品をレポートさせていただきます。

【無味無臭・無色透明の極まれり。】

お時間の取れます方はまず先に下記の動画を観ていただけると当レポートがより深く読めることと思われます。
…と言いますのも(音[の傾向]の記憶力にはそこそこ自信があるのですが、少しでもよりしっかりとしたレポートにしたいと思い)今回は黒江自身が以前の動画と比較試聴して色々な点を確かめているからなのですが、思いのほかに聴き分けられることに気が付き、すごい時代(システム)になったな…と。
(※ただし、2つの動画に於いてD-10X・D-07X共通で使用している音源はいわゆるデスメタルですので当店のコンセプトと肌の合わない方はレポートだけ読んでいただけますと幸いです。)

https://www.youtube.com/watch?v=HwpgxaprKLQ
(0分28秒あたりからD-07Xでのメタル曲再生)
(5分36秒あたりからD-03Xでのメタル曲再生)

https://www.youtube.com/watch?v=TXvtdksA3-E
(7分45秒あたりからD-10Xでのメタル曲再生)

動画内でも言及しておりますが、D-07XはD-03Xのブラッシュアップモデル・ハイグレードモデルというよりは、D-10Xをベースにコストダウンを図ったモデルと言え、回路構成や部品的にもD-10Xとの共通性が高く、実際の出音もD-10Xの方が親和性が高いように感じられました。

現状当店のリファレンスCDプレーヤーであるD-03Xと、以前に非常に高く評価させていただいている(現行機種では最高峰の)D-10Xの(お値段も)ちょうど中間に位置するモデルということで嫌でも期待は高まりましたが、このD-03X・D-10Xとの印象の違いも含めながらレポートしたいと思います。

■LUXMAN [D-07X]
●03と比べるとまずS/N感が1クラスも2クラスも上であることが分かります。03も十分な透明感を持っておりますが音場の見通しがより向上しております。
●03よりも更に高精細で粒子の細かいサウンドでありますが、且つほぐれ過ぎずに適度なエッジ感を残しています。
●スピード感に於いては07も03も甲乙つけがたく、両機を比べると、07はシャープなスピード感、03は(07を対象とするなら)ややアグレッシブなスピード感(ドライブ感)といった印象を持ちます。
●上位機種にありがちなやや行き過ぎたような(盛ったような)レンジ感ではなく、極めて自然でありながら高音~低音までよく伸びきったワイドレンジであり、(低音が膨らむことも、高音がしゃしゃり出ることもない)主張や強調が無くフラットに揃った出音となっています。
●超が付くほどのハイスピードではないものの、全体的にとても自然でありながら高純度・高鮮度・高音質といった印象が強く、(見出しの通り)極めて癖が排除されたサウンドは(元の情報から)盛られることも失われることもなく、結果的に自然なハイスピードサウンドに仕上がっているのではないかと推察しております。
○03に比べるとやや上品、07に比べるとやや素朴といった、中間モデルならではの半端感があることは否めませんが、個人的には07がもっとも好みと言えそうです。
黒江的好み度:S
(※以前のレポートではD-03XがAで、D-10XがSですが、D-03XはSに近いAであり、D-10Xはその完成度ゆえにSであったため、純粋な好きさでは07になりそうです。)

…ということで、3機種あるとなかなか纏め辛いこともありますので下記にワンポイントも記載しておきます。
ご検討の際に参考になれば幸いです。(…とは言ってみましたが、この3機種であればご予算次第で問題ないかと思われます。)

▼兄弟機3機種のワンポイントレポート
S/N感
D-10X >> D-07X >> D-03X
07も十分すぎるくらいのレベルですが、10がさらに上をゆく高次元といった印象です。

解像度(音場全体)
D-10X > D-07X >> D-03X
07を「細かいミスト状」と例えるなら、10は「目に映らない微粒子」くらいに高い解像感、非常に細かい部類の03でさえ粗めに感じられますが、解像度が高すぎるより、実像感が得やすい03を好まれる方もいると思います。

スピード感・音の切れ
D-07X >= D-03X > D-10X
下記の分解能とのマッチングもあって07がもっともスピーディに感じられますが、アグレッシブ系のスピード感・ドライブ感は03に軍配が挙がるので、音源次第では03がベストになりそうです。10はその細かさとスムースさゆえに鋭利なスピード感はあまり出ません。

音場空間
D-10X > D-07X >> D-03X
音の広さは別格的に10が広大です。03は上下左右奥行き(前後)すべてでやや狭く感じられます。

分解能(1音1音)
D-10X >= D-07X > D-03X
基本的には上記「ミスト」vs「微粒子」ですので10が頭一つ抜けている印象ですが、スムースな10に対して07は1音1音の輪郭が見えるため、好みの差になりそうなので“ほぼ互角”といった印象です。

レンジ感
D-10X > D-07X > D-03X
03が悪し、07が普通、10が良好ということではなく、03が良好、07が優秀、10が非凡・秀逸といったレベルと思われます。

D-03Xのレポート
http://www.digitalside.net/?p=1104

D-10Xのレポート
http://www.digitalside.net/?p=1115

Pioneer PD-50AE

月曜日, 12月 7th, 2020

今回はPioneerからの新製品であるSACDプレーヤーをご紹介させていただきます。

【名機となるか、集大成プレーヤーの放つ輝き。】

まず先に1つ述べておきますと、このPD-50AEはベースが(2017年秋発売の)PD-70AEということであり、実質的にもかなりPD-70AEに近いサウンドとなっておりますので以下のリンク先(PD-70AEのレポート)も参照いただけますと幸いです。
http://www.digitalside.net/?p=993
※「“デ***”と“ネ****”が良くないのでは…?」となっているところはデザインとネーミングですね。(何で伏字にしたんだろう。笑)

ネーミングについての疑問は本機でも同様で、70AE→50AEとなると2クラス以上は下のイメージですが実際は若干のコストダウンモデルといった印象なので(65AEでもよいくらいで)60AEくらいが妥当ではないかと思うところではあります。(プライス的にも僅かですしね。)
また、PD-70AEは現状では終売になりそうであるため、このPD-50AEは実質70AEのリプレースモデルと言っても過言ではなさそうです。
その点なども踏まえた上でレポートしていきたいと思います。

■Pioneer [PD-50AE]
●やはり高いS/N感と解像感が顕著ではありますが、S/N感重視のクリア系だった70AEに比べると、50AEはやや情報量(高密度)系に拠っているような印象です。(当店ならではのワードだと70AEの方がややハイスピード系、50AEの方がややアグレッシヴ系といったところです。)
●70AEと同様に全帯域が揃っておりバランスは良好、凸凹感の無いすっきりとした出音であり、立ち上がりもスピーディです。
●70AEよりは硬質感は感じさせず、その分“張りのあるサウンド”の印象があります。低域はタイトで量感も過不足無く好印象、高域もしっかりと伸びておりやや鮮やかさや明るさの高めの印象があります。
●70AEと同様にやや“ウェットさ”を感じますが、声の再生に関しては色気や艶、パワフルさに繋がっており生々しさが魅力的です。
○70AEに比べるとやや1音1音の粒が大きい印象です。※後述のD-03X比較にて
黒江的好み度:S

…と、このようなサウンドに仕上がったようですが、すべて通常のCD再生(44.1kHz/16bit)での考察となっており、且つDIRECTモード時のものとなっております。※アップサンプリングモードなどにすると音場が広大になりますが、音像がややぼやけ、低域もゆったりと床を這うようなサウンドに変化します。→これだけ変わる(変えられる)なら「それはそれで使い勝手が面白い」とも言えると思いますが。
(なお、PD-70AEとの直接比較はできておりませんが、以前のレポートやLUXMAN D-03Xとの比較(D-03XとPD-70AEの比較時の記録を参考に)で一部述べさせていただいております。)

(動画https://youtu.be/Zzc0oc8k-yUにもある)現在のリファレンスLUXMAN D-03Xとの比較試聴に於いてはシャープさ、分解能、切れなどはD-03Xの方がやや優勢、情報量と低域の深さ、空間の広さはPD-70AEの方がやや優勢といったところですが、個人的な好みの範囲かと思いますので(動画も参考に)吟味していただけますと幸いです。

(色々と大人の事情もあって)流通量が非常に少ないプロダクトとなっておりますので、ご購入の際はお早めにご注文していただけますようお願い申し上げます。

marantz SACD 30n and MODEL 30 (postscript)

月曜日, 10月 12th, 2020

新しいラインナップとなるmarantz 30シリーズ、3連載の最終編です。
新製品をカップル(つがい)で聴いた時のまとめを簡潔にレポートさせていただきます。

【相性は良好、お互いのウィークポイントを補完し合える関係。】
(…とはいえ、ウィークポイント(弱点・欠点)と言うほど双方レベル・クオリティが低いことはないので、あくまで見出し的な表現ということでご理解ください。)

個別のレポートを読んでいただけると分かるかと思いますが「MODEL 30は鳴りっぷりが良いけれどやや低重心」「SACD 30nは少し穏やかだけれど高音~低音まできれいな伸び」といった感じであり、2機種を対で繋ぐことでブレンドされ、よりナチュラルなサウンド傾向としてアウトプットされます。

MODEL 30は(ドライとは言いませんが)やや(良い意味で)カラッとした傾向なのでSACD 30nのウェットさで上手く調和されています。高域のレンジ感もSACD 30nはきれいに伸びており程よく補完されている印象です。

SACD 30nは上質できれいな鳴りですが、その分音が前に向かって来ず、少し穏やかで落ち着いた音調なのでMODEL 30でドライブすると音にメリハリが付いて躍動感が付随します。やや平面的だった音場(サウンドステージ)も立体的になる印象で良いフィット感だと思います。

…と、音調・傾向的には上記のようなマッチング・フィット感となり、黒江的には好印象のペアだと考察しております。

なお、SACD 30nが多彩なデジタル入力・デジタルソースに対応しており、デジタルステーションとしての活躍が見込めるため、この『SACD 30n と MODEL 30』にお気に入りのスピーカーを組み合わせるだけでシステムがほぼ完結するので非常にシンプルで高音質・高機能なオーディオを構築することができる点もお勧めしやすいポイントとなっております。
(リモコンも1つでプレーヤー・アンプ両方の操作が出来るので扱いやすく便利です。)

ぜひセットでのご検討もよろしくお願いいたします。

P.S.
こちらの製品はショッピングサイトではご購入いただけませんので下記メールアドレスまたはお電話などで直接お問い合わせください。
manager@digitalside.net

marantz SACD 30n and MODEL 30の動画はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=2GKrInNqJrw

marantz SACD 30n

木曜日, 10月 8th, 2020

今回はmarantzからの新製品をご紹介させていただきます。

【家庭円満をもたらすかも?ポリバレントな優等生キャラ。】

この度、30シリーズとして装い(フェース)も新たに(デザインはレガシーモデルを踏襲しているそうですが)したラインナップが登場することになりました。
サウンドやデザイン・フォルムに関しては“最新鋭でありつつも原点回帰”といった方向性を奥底に持っているようですが、はたしてどのようなサウンドを聴かせてくれるのでしょうか。期待を胸に試聴させていただきました。

■marantz [SACD 30n]
●ファーストインプレッションとして「よい意味で無難な傾向かな…」といった印象を持ちます。基本的音質性能であるS/N感・解像感・レンジ感などなどがすべて納得のいくレベルであり、音質面に於いて一切の疑問を感じさせません。
●音色面での癖が少なく、素直なサウンドをベースに少しウェットで少し落ち着き・穏やかさのある仕上げになっています。
●派手さ、煌びやかさなどを感じさせる傾向には無いですが、(だからと言って)無機質であったり硬質な音調ということもなく、極めてニュートラルな音の部類に属します。
●同様に、抜群のキレ、スピードとはならないものの、音像感・音場感はしっかりとしていて安定型です。全帯域で音の緩み、余計な余韻などがなくすっきりとした見通しです。
●音の傾向からしてもオールラウンドタイプと言え、ジャンルを選ばずに良く鳴らしてくれますが、どちらかと言えばアグレッシブサウンドよりはソフトなサウンドの方が(より)得意に思えました。
○個人的にはもう少し硬さやシャープさが欲しかったかな…と思います。→その点だけでスピードやキレも向上しそうです。
黒江的好み度:A

…と、いわゆるオールラウンド系ですので「無難で何かに突出していないサウンド」ということで問題は無く、むしろ歓迎されるべきことと捉えておりますが、歓迎したい大きな理由としてこの「SACD30n」の持つ特徴が挙げられます。
それはSACD30nには『非常に豊富な入出力機能』が備わっている点です。CDプレーヤーとしては当然のこと、他には主なものでUSB(DAC)・有線LAN・無線LAN(Wi-Fi)・Bluetooth・同軸デジタル・光デジタルに対応しています。

仮に(仮説として)このSACD 30nを『リビングに設置して家族で共有できるオーディオシステムの中核』とした場合、テレビやBDプレーヤー(レコーダー)や各種ゲーム機を同軸や光デジタルで繋ぎ、PC/MacとはUSB DACまたはBluetoothで接続、インターネットラジオ程度ならWiFiで、NASがあればネットワークのハイレゾ音源も全てSACD 30n経由でオーディオシステムで鳴らすことが可能になります。
また、普段はスマホ・タブレットで音楽を楽しまれている方も、AirPlay 2やBluetoothですぐにオーディオに接続できるので「その音の良さに喜んでくれるかもしれません」が、ロックやポップスも“無難に、安定的にこなせる”ので誰の音源(ソース)でもWelcomeではないかと思います。

あらゆる機器(人間関係)の間に入って上手く橋渡し、仲を取り持ってくれる。そんな出来る子がファミリーに1人(1台)あると素敵なのかもしれません。
まだまだ家でコンテンツを楽しむ時期が続くことと思います。ぜひこの機会に新しいファミリーを迎えていただければと存じます。

P.S.
こちらの製品はショッピングサイトではご購入いただけませんので下記メールアドレスまたはお電話などで直接お問い合わせください。
manager@digitalside.net

marantz SACD 30n and MODEL 30の動画はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=2GKrInNqJrw

LUXMAN D-10X

月曜日, 5月 18th, 2020

今回は、先日のD-03Xに続いて登場したフラグシップCDプレーヤーをご紹介させていただきます。
(結果的にの、結果的にCDプレーヤー4連投となってしまいました…。こんなことってあるのですね。)

【禍根を断ち、晴天をもたらすサウンドに王冠を捧ぐ。】

(意味深な見出しになっておりますが、色々な思いを巡らせつつ…。)
まず先に述べてしまいますが、黒江にとってはこの数年来ではもっとも好評となる“素晴らしい”の一言に尽きるサウンドでございました。
これで先日の『SOULNOTE S-3』と対を成す、最高峰のCDプレーヤーが並び揃ったと言えます。
もちろん、S-3とはサウンド傾向(キャラクター・持ち味・個性)が異なっておりますので、その点も踏まえつつレポートしたいと思います。

■LUXMAN [D-10X]
●傾向としてはクリア系の頂点とも言えるような高いS/N感をベースに錬成されたハイスピードサウンドを基調としています。
●1音1音は非常に高い分解能によって、細密・緻密・繊細に分解されており、別格の域を誇ります。この稀に見る分解感によって雑味や歪みが皆無となり、サウンドが硬質傾向でありつつも刺激的になり過ぎずに(耳の中で)溶けてゆくような上質さを持っています。
●上下(天地)左右のサウンドステージは広大ではありませんが(黒江的には丁度良い広がりで)、奥行き(前後)の空間表現に優れており、上下左右前後の高いセパレーションと空間の静寂感が相まって“無音空間に音が現れる”理想的な(1音1音の)展開が印象的です。
●帯域バランスも上々で、低音域はタイトであり解像感・解像度も非常に優秀です。(ソースによってはやや低音の量感が多く感じられることも…。)
●音のエッジは繊細且つしっかりとした描写となりますが、(音の実像感や輪郭を強調してくる)強いエッジ感を感じさせないシルエットとなります。
●音の立ち上がり、切れも良く、余韻は過不足もなく自然体です。立ち上がり・キレ・余韻・エッジ感などなど全てに於いて“高分解”要素が効いていて繊細でありながら鮮烈なサウンドです。
○黒江個人としては“やや低音の量感が多い”かな…と。(もう少し抑えられていれば↓好み度はS+~初のS++が出たかも?笑)
黒江的好み度:S

…ということで、(2020年5月時点では)アグレッシブ系の最高峰SOULNOTE S-3に対して、ハイスピード系の最高峰LUXMAN D-10Xということになりました。
(※黒江自身がアグレッシブ系よりも少しだけハイスピード系が好きなので、好み度の差はその点だけです。どちらも所有したい…。)

ちなみに、S-3・D-10X共通で低音の量感に言及しておりますが、黒江がコンパクトモニターを好むこと、元来やや薄めの低域が好きであることなどで「自分の方が少数派」であることは自覚しております。
(少なくとも、もう少し大きいスピーカーがリファレンスであればこの量感でちょうどよいのかもしれません。)
…が、(コンパクトモニターに最適化された)もう少しだけ抑えたサウンドを聴けたらな…と思わずにはいられない結果となりました。

とにかく高いS/Nに拠る背景ノイズも1音1音もノイズレスに加えて、びっくりするほどの高分解サウンドが爽快です。
特にシンバル系・シャウト・ディストーション、単音も和音も明晰な表現など“音の粒子感”が必要な要素は極めてハイレベルです。

…と、S-3よりも少しだけ力説してしまいました。(高額ではありますが、価格相応の実力機だと思います!)

TRIODE TRV-CD6SE

木曜日, 5月 14th, 2020

今回はトライオードさんの新製品をレポートさせていただきます。
(結果的にCDプレーヤー3連投となりました。)

【最後のアクセントはループタイ?ネクタイ?】

冒頭でこんなことを述べてはいけないかもしれませんが、レポートを書くつもりがなかったくらいに「良い意味で意外」な感想となりました。
意外とさせていただいたのはトライオードさんと言えば真空管アンプが代名詞のブランドであり、CDプレーヤーの印象はほぼ皆無でもありますし、印象を想像するのならば「やはり真空管らしいサウンド」なのではないかと思っていたからなのですが、いつものようにいつもの曲達を再生してみます…。

■TRIODE [TRV-CD6SE]
●一聴してすぐによぎるのが「思いの外にバシッとしたサウンド」であることです。(真空管がそうだと決めつける気は毛頭ございませんが…)ナローだったり、ファットだったり、スローだったり、ブーミーということはなく、ザ・真空管と思わせるような印象はありません。
●逆に良い面での“真空管らしさ”は随所に見受けられ、ダイナミックさ、鳴りっぷりの良さ、押し出しの強さ、など音にパンチも感じられ、いわゆるアグレッシブ系の傾向を感じ取ることができます。
●かと言って、重厚・濃密になりすぎず、S/N感・解像感・レンジの広さも上々であり、「すっきり爽やか」とはなりませんが、「音抜け、見通し」は良好です。
●全体の帯域バランスも良く、1音1音は緩むことなくタイト、やや硬質よりではありますがニュートラル感も高く、音の色味が薄まらずにしっかりとした発色をしております。
●音の立ち上がりも上々で、ビシッ・バシッと立ち上がり、スーッと力強く伸び、スッと消えていくような躍動性を感じる傾向です。
○ソリッド・シャープ系には分類しないサウンドのため、エッジ感は強くありません。輪郭線は少し太くしっかりとしています。
○音の質感ではほんの少し丸みや太さを感じる面もあります。
○スピード感は鈍足ではないものの(不足感はない程度の)中速くらいに位置します。音の切れも鋭利(キレッキレ)ではなく、「十分にしっかり切れている」くらいでしょうか。
黒江的好み度:A

…ということで、いわゆるアグレッシブ系としてはなかなかの好位置に付けてきてくれました。
『ハイスピードの切れサウンド』ではないものの、黒江的には決して不評となるものではなく、(僕的に一番簡単に例えるなら)ハイスピード&ソリッド系のギターサウンドをフェンダーとメサ(ブギー)で作るとしたら、このTRV-CD6SEはマーシャル・レスポールのギターサウンド。…といったところであり、どちらも必要なサウンドであるものです。
(↑極端に例えていますので、こんなに大袈裟な差異ではありません。)

硬質でハイスピードの切れサウンドでは味わえない、グイッとしたマッシブさがありつつ、スピードも切れもクリアさも落とさないのはなかなか絶妙な(音の)着地点を見つけたような印象を抱きました。

なお、この“TRV-CD6SE”最大の特徴とも言える出力段の切り替えですが、レポートは基本的に総て“トランジスタ”(石)モードでの試聴結果になります。
“チューブ”(球)モードに切り替えて聴いてみると「全体が少しウォーム(温い・暖かいまではいかない)になり、余韻が少し伸びる」感じに切り替わるものの『圧倒的に石の音・圧倒的に球の音』とまでは変化が得られず、意外に小幅な変化と感じられました。
(球の方が抜けが少しいいかも…と思ったりしましたので、石・球の優劣等は評しません。ここでは「球にするとちょっとフワッとしますよ。」くらいでよいかなと。)

P.S.
ちなみに、最後にスペックを確認してみましたが、(石・球に関わらず)真空管のバッファーが掛かっているのですね…。(これが無ければスピード感とキレが上がってもっとハマったのかも!と。笑)

SOULNOTE S-3

火曜日, 4月 14th, 2020

今回は昨年末に登場した、SOULNOTE社の渾身作SACDプレーヤーをレポートさせていただきます。

【Class Aタイプの最高峰に君臨する威風堂々サウンド。】

まず、見出しに「Class A」と入れておりますが、CDプレーヤーですのでアンプのようにクラスでの分類(純A級・AB級・D級など)はありません。
あくまでもサウンドやサウンドを形成する回路設計・設計思想から(アンプで言えば)“Class A”(A級)タイプの傾向であると分類させていただきました。

同社の製品は以前にフラグシップDACのD-2や、ハイエンドアンプのA-2、エントリーモデルのA-0を高く評価(黒江の好みで)させていただいておりますので一読いただけると幸いです。
D-2
http://www.digitalside.net/?p=1056
A-2
http://www.digitalside.net/?p=1076
A-0
http://www.digitalside.net/?p=1019

本作もやはり↑この2機種同様に基本は“ぶっ放してくる傾向”のアグレッシブサウンドです。
…が、さすがの(100万円超え)価格帯であるからには「一度聴いたら黙らせるだけの説得力」がもう一声欲しいところではありますが、その実力やいかに…。

■SOULNOTE [S-3]
●まず先に1つ踏まえておきたいのは、フラグシップDAC[D-2]のノウハウがふんだんに盛り込まれて(ベースになって?)いることです。大きな共通点としてDACチップ『ES9038PRO』を左右で2基ずつ、合計4基搭載しておりサウンドの中核を形成しています。
●その上でD-2を念頭に入れながら述べていきますと、D-2では一聴して高い情報量が印象に残っておりましたが、S-3では情報量もさることながら高いS/N感が印象に残ります。
●サウンドはやはりアグレッシブ系の基調であり、激しくも整然とした1音1音のラッシュが、無音時には(時が静止したかのように)ピタッと止まり、一瞬の静寂感をもたらしてくれます。
●S/N感や情報量に加えて、基本的音質を司る帯域のレンジ感、ダイナミックレンジ、1音1音の雑味の少なさ、音像定位、音場の解像感などなど、サウンド全体において不安を抱く要素は見つかりません。
●躍動感があり、能動的、しっかりとしたエッジ感で音・音楽に存在感がありながらも、雑にならず、上品さも感じられ、派手にふるまうような傾向にもない非常に絶妙なポイントを点いているようなイメージです。
●ハイパワー系にありがちな歪みっぽさもなく、とても研ぎ澄まされています。
○強いて言えば少し低域の量感が強めであり、ソースによってはほんの少し大味(良く言えば大らか)に感じる面も。
○押し込みの強いサウンドのため、広大な奥行き・ストロークを描く傾向ではありません。
黒江的好み度:S-

…ということで、(価格的にも)さすがといいましょうか、「納得」の一言でした。
黒江個人としてはスネアの音が抜群であり「スネアだけでもずっと聴いていられる(笑)」と思ったり、ギターの鳴らし分け(レスポール・ストラト・テレキャス・フライングV・シェクター・ジャクソン・その他、各PUサウンドも)が鮮明に感じます。
シャウト系も良好なのでゴリゴリのメタルから、80’s系メタル・ハードロックなどはもちろんですが、(スネアやギター筆頭に)全体的に1音1音の音色がハイレベルにあるので、意外にも歌物やアコースティックも得意だったりとなかなかの縦横無尽ぶりも魅力ではないかと思いました。
どうしても硬めのモニター系サウンドだと音に神経質になったり、聴いていて少し緊張感があったり…としますが、ビシッとしたサウンドなのに“楽しく音楽が聴ける”と感じたのは久しぶりの出来事だったので妙に嬉しいことでした。

当ブログでも述べている通り、CDプレーヤーはもはや絶滅危惧種(候補)のはずなのですが何故かヒットが続いております。CDが「まだ僕を見捨てないで」と訴えかけているのかも?しれません。^-^;
なお、USBや同軸入力も装備し、DACとしての使用もできますので永く使っていただけることと存じます。

P.S.
DISCのローディング時間が遅めですのでご使用の際はご容赦ください。

LUXMAN D-03X

木曜日, 3月 5th, 2020

今回はLUXMANからの新製品、今となっては希少なリリースとなるディスクプレーヤーD-03Xをレポートさせていただきます。

ちなみに、ディスクプレーヤーのリリースが希少である理由は(言うまでもありませんが)昨今に於けるディスクメディアからファイルメディア(データメディア)への転換・移行による需要減が主なところでありますが、そんな最中においてこのような力作を世に送り出してくれただけでも一定の賞賛を送りたいと思っております。

【スタンダードリスナーに於けるウェルバランス型の最有力。】

先に述べておきますとこのD-03Xは黒江個人(≒ザ・ステレオ屋サウンド)的にはやや低音の量感が豊富に感じるサウンドであり、(何度も何度も述べておりますが、当方は『やや痩せ型且つタイトで引き締まっており、その分スピード感やキレのある硬質傾向の低音が好み(ファーストチョイス)』なので)もっとも好きなタイプの低音域(の表現)ではありません。
…かと言って、このD-03Xはブーミーだったり、緩々だったりするわけではなく、(バキバキの硬質低音ではないものの)解像感が高く、見通しの良い低音域ですので(黒江的には)数ある低音域(の表現)の中ではセカンドチョイスには入ってくる傾向であると考察しております。

■LUXMAN [D-03X]
●高い解像度を基調に(拡がり過ぎていない)やや広めの音場感を描き、高いS/N感によって無音の空間にサウンドが瞬きます。
●中音域~高音域の分解能、定位感は(これまで聴いてきた中でも)トップクラスであり、俊敏・鮮明・デリケートに1音1音を描く印象です。
●やや広めの音場性ながらも音像が肥大することなく、高いセパレーションで各パートを配置させています。
●(中音域~高音域は)適度な余韻がありながらも、立ち上がりが早く、スッと立ち消えていき、一切の雑味を感じさせません。
●(特に中音域~高音域は)切れやスピード感も良好であり、『パッと現れては消える』淀みの無い爽快なサウンドを展開してくれます。
●レンジ感も良好であり、特に(きれいに伸びきってくれる)高音の伸びが秀逸です。低音もしっかりと最低域まで再生できており不足はありません。
●音傾向は少しだけ寒色傾向、高い音場性でありながら音像性(定位)も損なわないのは稀有な存在であるかと思います。
○強いて言えば少し低音の量感が大きいように思う場面があります。
○また、量感は好み次第として、中高域(やや寒色で硬質傾向)と低域(ほんの少しだけ音の先端が丸く、ほんのり暖色に思えることもある)のタッチ感が聴いているジャンルに拠ってはミスマッチに感じられることがありました。
黒江的好み度:A

…といったところになりますが、総じてはかなりの実力機であると断定できる完成度となっております。
低音の量感に関しては(くどいようですが黒江が痩せ気味を好むので)、「このくらいで丁度いい」と思われる方も少なくないかと思われます。
なお、基本的には主にCD再生(16bit/44.1Hz)での考察でありますが、メタル・ロック・ポップス・アコースティック・歌物などなど、あらゆるジャンルで隙の無い再生を得られ、いわゆる“オールジャンル向き”と言えるタイプに分類します。

CD・SACD再生に加え、USB DAC機能・バランス出力搭載、さらにMQA再生への対応と機能面でも隙の無いモデルです。
希少なCDプレーヤーの選択肢にぜひ名を連ねていただければ幸いです。

Aura vivid Premium Black Edition

木曜日, 7月 18th, 2019

今回はAuraのLimitedモデルをレポートさせていただきます。

【鮮やかに、鮮烈に、鮮明に。】

まず結論から述べますが、前回のTEAC AP-505に続いての大プッシュモデルになっております!(続くときは続きますね。)

限定モデルということで、しっかりとしたレポートを書くことに少々迷いもあったのですが、今となっては数少ないCDプレーヤーのプッシュモデルとなりますので意を決しました。
(なので、後々このエントリーを読んでいる方、すでに入手は困難かと思われます…。)

…と、まずは今回のvivid Premium Black Editionのベースとなったノーマルのvivid(and vita)のレポートも参考にしてください。
http://www.digitalside.net/?p=667

以前のvividは『ハイスピードだけれど低音が明らかに薄め』であり、ちょっと物足りないサウンドではあったのですが、変化はあったのでしょうか…。

■Aura [vivid Premium Black Edition]
●元祖vivid(↑)でのよかったポイントはそのままにしっかりと継承されております。(その上で以下に続きます。)
●いわゆるハイスピード系であり、ハイスピードの中でもかなり上位に位置します。(“超”が付くほどではありませんが…。)
●帯域バランスは(元祖vividで薄かった)低域までしっかりとフォローされ、高音までバランスのよいサウンドとなっております。
●S/N感・分解能も上々であり、1音1音がシャープかつ鮮明に実像感の高い鳴り方をします。
●(輪郭線は細いながらも)エッジ感があり、立ち上がりも鮮烈で、「ビシッ」とクイックな印象を持ちます。
●(TEAC AP-505で「アグレッシブにハイスピードが溶け込んだ」と喩えましたが、vividは逆で)ハイスピードをベースにアグレッシブが絶妙に溶け込んだようなサウンドであり、緩みや丸みを含ませない“「無」付帯音系”の属性です。
○こじんまりとしたサンドステージではありませんが、大きな広さはなく、比較的タイトな音場感となります。
○S/N感・解像度は高いクオリティを見せながらも(クラス上のモデルに比べてしまうと)“超”が付くようなレベルにはあらず、価格帯なり(以上には感じられますが)の中では優秀な方かと思われます。
○もっとも注意していただきたいのは「ただのCDプレーヤー」であることです。USBも無いですし、SACDなども再生できません。
黒江的好み度:S

…と、(16bit/44.1kHzの)CDプレーヤーとしては最後?の(黒江的)名機指定と言っても過言ではないプレーヤーです。
vividという言葉が、鮮やか・鮮明ということは理解していましたが、他にも「目の覚める(ようなサウンド)」であったり、「はつらつ・躍動感(も持ち合わせている→鈍足サウンドには出せない)」などの意味もあり、正に『名は体を表す』でありますし、設計者がちゃんと名前に沿った音を作れる(その逆で音から名前を考えたのかな?)のがすごいな…と思わされます。
(「明るく輝く」という意味もありますが、明るさ・派手さはそんなには無いかな…。)

(毎度恐縮ですが…^-^;)メタルだとギターの歪み、シャウト系のボーカルは抜群であり、シンバルや金物の「キンキン」感や倍音なんかがとても気持ち良く耳に刺さります。(→刺さる系のサウンドです。)
すでに残数の少ない状態のようですが、ぜひぜひチェックしてみてください!(もちろん、このモデルはvitaと組み合わせなくても大丈夫です。ぜひ単体でお求めください。)

2019年、黒江の心に「強烈」に残った1台でした。