Archive for 12月, 2014

Pioneer N-70A

木曜日, 12月 11th, 2014

今回は表題のN-70Aをクローズアップしてレポートしたいと思います。

【そつなく、癖なく、隙なく、あらゆるジャンルを自然に鳴らす。】

サウンドレポートの前に発売日からこのN-70Aを聴いてきた雑感のようなものではあるのですが、黒江が記した前回の「vsレポート」然りで、これまでは何となく「N-50の後継がN-50AでN-50Aの音質をより高めたのがN-70A」のような概念を持っていました。

…が、最近ではこの3機種がまったく別物の3機種であるような考え、位置づけに代わってきており「N-50は最終プライスが非常にお得なベーシックモデル」「N-50AはDSDが再生できるエントリーモデル(N-50の経験値を活かしてはいるけど、N-50をベースにして造っているのではない(DACチップがまったくの別物ですしね…)。)」といった捉え方も色濃くなってきております。

そして、このN-70Aなのですが、前述の通りN-50A(の音質をより向上させて)との差別化を図ろうとしたしたモデルというよりは、marantzのNA-11S1(NA8005)やLUXMANのDA-06(DA-200)などを強く意識して設計・計画されたのではないかな…と勝手ながら推測してみたりしています。

もちろん、(価格も倍近く異なる)NA-11S1やDA-06にはそうそう簡単には及びませんが、後発の優位性である機能面やCP面ではなかなか良いところに付けていると思いますし、何より僕がはっきりと述べておきたいのは「豊潤で濃厚系」であったり「しっとりとした美音系」であったりする2機種とは異なるテイスト(味付けのないのが味)で勝負をしてきたと思われる(思いたい)ということです。

…ということで、こういったことを踏まえつつ、レポートしてみたいと思います。

■Pioneer [N-70A]
●N-50(無印)でも十分すぎるくらいのS/N感(特に同軸デジタル・USBメモリー・USB接続)だと感じていましたが、更にその上を行く透明感・明瞭感・静寂感を持っています。NA-11S1やDA-06と比べてもその差はわずかであり、高音質の基本要素として十二分なクオリティであると思います。
●解像度も高く、定位や音の位置関係、奥行きなども良好ですが、音の広がり(音場・サウンドステージ)はあまり広がらず(黒江的には適度)、広大なホール感を描き出す傾向ではありません。
●スピード感は「vs形式」でN-50Aよりも上回る表現をしていますが、もう少し具体的に言うと、1音1音の出音自体は(N-50AとN-70Aは)ほぼ同等のスピード感に感じられるところ、前述のS/N感の相乗効果で抜けや見通しが非常に良好であることからN-70Aの方が頭1つリードしている印象になるのだと考察しています。
●「切れっ切れで、鋭角でシャープで鋭い立ち上がり」とは“言えません”が、この辺(アタック音・エッジ感)も高いS/N感や解像度の恩恵でとても鮮明な音を描き出しています。以前の通り、強いて言えば少し音の切れは穏やかな傾向で、(N-50などと比較すれば)少し余韻型に寄っています。(…とは言え、スピード感・抜け・切れ・エッジなどの「ハイスピード&アグレッシブ要素」はNA-11S1やDA-06よりも高く、≒モニター調≒硬質拠り…とも言えます。)
●情報量や濃さ、ダイナミックレンジなども(NA-11S1やDA-06には及びませんが、N-50やN-50Aよりはグッと高まっており)上々なのでクラシックやアコースティック、ストリングスなどの音の質感の表現を求められるジャンルでも(モニター調ではないかと思いますが)無難にこなしてくれると思います。

●1音1音、音の造りは見出しの通り基本的に「無味無臭の味付けのないサウンド」の傾向で間違いありません。ソース(録音)に忠実であり、余計な脚色や味付けはほぼゼロです。強いて言えば、(前述の切れと)わずかに大人しい(ビシバシと叩きつけるようには飛んでこない)といった印象がある程度です。(←これも音がほぐれているからこそ感じられる要素なので一概にマイナスとも言えません。)

○良く言っても「優等生的」、悪く言っても「優等生的」とも言え、例えばあるジャンルに長けている方には「松ヤニの質感に少し難がある」とか「ラッパの乾いた金属音が…」とか「シャウトの擦れ具合が…」とか、“惜しいんだけどな”と思われることもありそうなのですが、黒江的には総じて何を聴いても“ちゃんと鳴らせてるな”と思う採点となっています。(前述の通り、「シャウトが惜しいな」とは思うのですが、十分にメタルもロックもポップスも鳴らせてると思います!)

…と、総評としては見出しのような印象になりました。
ので、図抜けてマッチしているジャンルがあるわけではないのですが、どのジャンルもかなりハイレベルで鳴らせてるということで良いと思います。
(強いて言えば、(色んなジャンルの要素が加わる)ポップスにはメチャクチャ強いと思っています。)

もう少し述べると、NA-11S1やDA-06は王道のオーディオ的で従来のオーディオファンをターゲットにしたモデルであり、N-70Aはモニター調で様々なジャンルを聴く幅広い音楽好きにターゲットがあるように思えました。
(メタルも好き、ポップスも好き、クラシックも聴くなんて方にはぜひお勧めします。)
ネットワーク機能があることもあって、家族や複数の人と音楽を楽しむタイプの方でしたら(それぞれが好きなジャンルが異なってもこなせる)N-70Aもきっと良い選択肢になるはずですので一度試聴等されてみてください。

お値段や試聴等、気軽にお問い合わせください。

Pioneer BDP-LX88 vs BDP-LX58

火曜日, 12月 2nd, 2014

このところ(新製品ラッシュということもあって)Pioneer製品ばかりがエントリーされていますが、間もなくnorth star designやその他のレポートも予定しておりますので今しばらくはご容赦くださいますようお願い申し上げます。(Pioneerから袖の下を貰ってるとか、優遇してもらってる…などなど、お好きに言ってやってください!笑)

…ということで、表題のブルーレイディスクプレーヤーをレポートさせていただくのですが、当店(ザ・“ステレオ”屋ですし)“画もの”には大して詳しくありません。
…が、OPPOの登場からネットワークプレーヤーであったりUSBメモリーの再生などに対応してきたこともあり、多くの方から「(CDなどを聴く)音質面ではどうなの?」といったお問い合わせも少なくなありません。
そこで、かつて(DVDが普及してきた頃)の“ユニバーサルプレイヤー”と同じく、音にクローズアップしてチェックして(レポートして)みるといった試みをしてみましたので、少しでも参考になれば幸いと思います。
(画もののプレーヤーでCDを聴くユニバーサルプレーヤーの先駆もPioneerのDV-AX10/DV-S10Aであったような記憶があります。「今また正に」といったところですね。)

【さすがの風格を感じさせるBDP-LX88にCPでは絶対的なBDP-LX58の存在感。】

いつものように「vs形式」ではありますが、「vs」とは「絶対的な優劣を決める」という意ではないので予めご理解ください。

試聴は基本的にすべて「DIRECT(ダイレクト)」モード、CDとNASのファイル、USBメモリーのWAVファイルを中心に聴いています。
(※映像の絡んだ音質面は“一切検証していない”ので予めご容赦ください。)

■Pioneer [BDP-LX88]
●同時季に(同様に兄弟機で)リリースされたN-70AとN-50Aでも同様の差別化が図られていましたが、筐体の作り、特に側面と天板部が圧倒的に上質な仕上げとなっており、質感や剛性による音質面への配慮が感じられます。(重量感もグッとあがっています。)
●情報量・S/N感・解像度・レンジ感はやはりLX88の方が圧倒的です。
●音の傾向はやや大人しく、ウェット感だったり、マイルド感だったり、ソフト感だったりといった印象も「ほんのり」持ち合わせていますが、基本的にはニュートラル系のサウンドであると言って差し支えないと思います。
●逆に、アグレッシブ・マッシブ・ハイスピードといったワードの印象もなく、言い換えれば特段に得意・不得意がないとも言え、Classicやボーカルものから何でも無難にこなしそうなユーティリティなサウンド傾向となっています。
●黒江の超個人的な見解では「大体14万円程度のCDプレーヤー」と匹敵する感じではないかと思っております。(※初回投稿時より訂正しています。)

■Pioneer [BDP-LX58]
●(前述の通り、兄機には及びませんが)基本的な音質面で顕著に不満を感じる(明らかに低音質と感じる)ことはありませんが、分解能・S/N感・レンジ感はもう少し欲しいかな…という印象です。(専用のCDプレーヤーと比べるとどうしても…。)
●音色はやや明るめのキャラクターですがドライではなく、どちらかと言えば、ほんのりウェット感がある印象でした。
●スピードは上々で、ほぼほぼハイスピードの部類に入れて問題はないと思います。
●切れ切れのスピード感ではなく、鳴りっぷりの良い、アグレッシブなスピード感を持っており、(当店で言うところのいわゆる)TEAC・プライマー(I21以前)路線の音傾向となっています。
●低域はタイトで、バシッと締まっています。量感も「ドンッ」と出せるけどボワつかず、ピタッと制動できている印象でした。
●黒江の超個人的な見解では「大体6万円強程度のCDプレーヤー」と匹敵する感じではないかと思っております。

…と思ったことをザッと書き出してみましたが、音色面において『LX88は大人しくて、LX58はアグレッシブ』と一目で捉えてしまう程には個性の差は大きくなく、ニュートラルなポジションからLX88は少しエレガント寄り、LX58はアグレッシブ寄りといった感じです。
ご推察の通り、黒江的にはBDP-LX58の方が好みですし、(CDなどを聴く上での)CP面でもLX58に軍配が挙がる感じですが、絶対的な音質はBDP-LX88がなかなか優秀で(おそらく映像も同様に基本面で1枚上手なので)なかなか悩ましいところではないかと思います。

「CDや音楽ファイルはたまにでいい」という方はぜひご検討いただければと思います。

P.S.
今回のようにユニバーサルプレーヤー(もとい、今だとマルチメディアプレーヤーでしょうか)で使用する上での難点は「アプリやリモコンだけでは思いのままに操作ができない」という点が挙げられます。
特にNASのファイル(DLNA)やUSBメモリーの再生は「ディスプレイ(テレビ)」にコントロール画面を映さないといけません。
(ダイレクトモードで音質を向上させたいけど、ディスプレイはオンにしなくてはいけない…みたいな矛盾は無い方が嬉しいです。)

本体のボタンも明らかに足りていないものが多く、黒江自身の考えですが『こういった機器類は基本的にすべて本体で操作できること、その上でアプリやリモコンがあると便利であったり、より直感的に操作できる』…といった考えがあるので、その点ではちょっとガッカリしてしまうような造りとなっていました…。
(Pioneerさん、ユーザーインタフェースの基本を今一度見つめ直してもらいたいな…と切に願っております!)