ESOTERIC CD Player X-30,X-25同時比較試聴レポート

はじめに・・・
昨年末に鳴り物入りで登場した、TEAC・ESOTERICブランドのVRDS搭載CDプレーヤーエントリーモデル2機。
TEACブランドで発売していた両機をあえてESOTERICブランドに格上げし、尚且つ同時投入したのには訳があると思い兼ねてより予定していた2機種同時比較試聴にトライさせて頂きました。
 
どうせ聴くなら2台同時で!
しかし、2機種(生産の関係でほぼとなりましたが)同時発売の割には、各雑誌にも(まあ仮に出ていてもアテになりませんが)2機種を比較試聴したレポートが少なく「先代機をヴァージョンアップするとほぼ同等になる。」とか「少なくとも先代機より遥かに音が良い。」とか調子の良い話しだけは聞こえてくるので余計に気になっていました。

確かにその実力は先代機より既に疑うまでもなく折り紙付きであると言える事には賛同でしたが、先代機のキャラクターをいかに受継ぎ成長したのか、気になるのは音質よりその音色でした。

先代機とは直接比較出来なかった事もあるのですが、そんな気になる音色面を中心に解説していきたいと思います。
 

先代機のおさらいから

VRDS-25XSの生まれ変わりがX-25、VRDS-50の生まれ変わりがX-30となりますが、先代機VRDS-25XS,VRDS-50がどんな音色だったかと言うと...。

VRDS-25XS・・・明るくドライ(且つ油っこい)。
メリハリが強く低域の力強さとギンギン・カンカンと響く(滲む?)高域がエネルギッシュな音楽を作り出している要因だったと思います。
思いっきりの良いサウンドでジャズのトランペットやロックの疾走感が印象的でした。
VRDS-50が後継機としてデビューしたはずですが、あまりの音色の違い(DACが違うので当然ですね)にVRDS-25XSの増産を決定し、つい最近まで市場に出回っていました。

VRDS-50・・・冷たくクリア(且つ薄味)。
深さはあるがメリハリはVRDS-25XSに比べると激減(25XSが強すぎた?)した感があり、高域の伸びと細さ、低域の締まりが強く、ピシピシと無機質に鳴ってる印象でした。
落ち着きのある音でVRDS-25XS(ラフ)と比べると大人っぽいサウンドでした。

さて、この印象に対するとX-25,X-30は先代機と全くカラーの異なる、むしろ逆と言っても良いかもしれないくらいに異なった印象でした。

 
試聴環境

IntegratedAmplifier
BRYSTON
B-60

Speaker
PMC
LB1
etc...

双方同じ電源ケーブル・RCAケーブル、当然壁コンセント〜タップも同一です。

 

試聴アルバム・曲
元ちとせ「わだつみの木」
Jacintha「HERE'S TO BEN」xrcd
Messiah「George Frideric Handel」xrcd
MARIAH CAREY「MARIAH CAREY」
USHIO ITO TRIO AND DUO「GREEN SLEEVES」
Mr.BIG「LEAN INTO IT」
etc...
 
概観
1曲1曲をこと細かに解説しているとかえって分かり辛くなるので、まずは相対的にX-25,X-30の音色の違いを挙げてみたいと思います。

X-25
●やや音場が広い。
●全体的にフラットな感じ。
●微小音・微弱音をよく拾う。
●後方定位。
●音の芯が細く・緩やか。
●立ち上がりのアタック感が弱い。
●やや定位感が悪い。
●高域・・・余韻があり艶やか。
●中域・・・滑らかで優しく潤いがある。
●低域・・・やや先丸で伸びが良い。

X-30
●立ち上がりのアタック感が強く引き締まっている。
●コントラストが強くメリハリがある。
●分解能・粒立ちが良く音が細かい。
●前方定位。
●やや硬めで無機質。
●くっきりとした音像。
●芯が強くハイスピード。
●高域・・・冷たく硬めで余韻が少ない。
●中域・・・ハリがあり力強い。
●低域・・・切れ込みが深く締まる。

と、やや対極的になりましたが、あくまでX-25とX-30を直接比較したためで、これらは絶対的な内容ではありません。
 
位置付けと感想

他社製品も含めて考えるとX-25は硬くも軟らかくも無く、VRDS搭載機としてもVRDS-25XSの後継としても「らしくない」と思われる事と思います。
反面、聴きやすく音楽的ですが1音1音がきちんと出せておらず、ヴェールを被せる事によってそれらしく聴かせている感も否めません。
個人的には以前よりVRDS-25XSを支持していて「X-25の方が良さそう」と想像していましたが、芯が細く全体的にガッツの無い音にがっかりしてしまいました。


X-30はやや硬く、やや明るい部類です。
骨太でハッキリとした音、大胆かつ細やかな印象ですが、VRDS搭載機「らしさ」を常に感じます。
fレンジもX-25より広く感じられ、他社製品を含めたプレーヤーの中においても秀逸な再生クオリティを発揮していました。
立ち上がりの速さと強さ、音の切れが強烈な印象で、どちらかといえばこちらの方がVRDS-25XSに近いような...。

率直な感想としては、
X-25はあのVRDS-25XSの後継とは思えないくらい穏やかな印象で、DENON[DCD-S10III Lim.]の方がまだピシッとした音色です。
VRDSメカは以前より注目していたがTEAC・ESOTERICのガツガツした感じが好きじゃなかったという方には非常に良い知らせかもしれません。

一方、X-30はVRDS-25XSとVRDS-50を足して2で割り、情報量や緻密さを増したこれぞVRDSといった印象です。

両機の違いに関しては大袈裟に言えば、アナログとCD、真空管とトランジスタといった違いだと思って頂ければ分かりやすいと思います。
補足としてDAC(X-25はマルチビット系、X-30は1ビット系)の違いがあり、それぞれ先代機から継承しています。

向き不向きとしては、
個人的には硬いクラシック・軟らかいロックもありだと思いますが、あえて一般的なイメージで表現するとそれぞれ、X-25はクラシック・ジャズ(管楽器・ウッドベース)、X-30はロック・ポップス・ジャズ(ドラム)に向きやすいと思われます。

X-30は好き嫌いがハッキリと分かれそうな音色ですが、何度聴いてもX-25よりソースの情報に対して素直な音を描いているように感じます。
あまり好きな表現方法ではありませんが、どちらかと言えばX-30の方が「正確で原音に忠実」であり、尚且つ定価5万円差では埋められないクオリティの差を感じるのです。

アテにしないと述べた上で気にするのも何ですが、専門誌ではX-25を(タイトとか芯が有る音とか)より評価しているようでしたが、これらの評価とは真逆の結果となりました。




トランスポートとしての実力
2機種を数種類のDAコンバーターと接続し同じように聴き比べてみました。
通常のプレーヤーの印象はそのまま受け継がれ、それぞれのDACのテイストを加味しているようです。
X-25は内蔵DAC使用時よりも芯が強く(太く)なる傾向が顕著で、X-30は滑らかになる傾向が顕著でした。

この検証でもX-30は情報量やS/N・解像度といった基本性能の高さを発揮し、より評価しています。
その最大要因はX-30のみに装備されているアナログステージ(DAC)のOFF機能で、X-30をトランスポートとして使用する際に背面のスイッチ(デフォルトではガードパネルで覆われています)でアナログ信号の出力を止め、加えてクロックの精製をデジタル出力直前で行う事により高精度のクロックを排出する事が出来る機能です。

この機能を利用し外部のDAコンバーターを使用すると、fレンジは高域側・低域側ともにより伸び、分解能やS/Nも向上し、これこそVRDSの醍醐味とも言えるであろう「他に類のないトランスポート」としての価値を見せてくれました。
 
考察
個人的な意見になりますが、ヴァージョンアップでほぼ同等という事は噂通りでないように思います。
ブリッジの違いが大きな違いに繋がるのであれば、ブリッジ交換だけでVRDS-25XSはかなりマイルドに、VRDS-50は極めてハイコントラストになる筈なのですが、既に25XSのブリッジ交換を済ませた方にも聴いて頂いても「あきらかにうちの音とは違う」と感想を述べられていました。

更にトランスポート使用時にも2機種の差は明確に出ていたのでこれらの違いは先代機とのブリッジの違いだけではないと判断したのです。
また、冒頭にもあるようにこのブリッジの他にはインシュレータ(足)の違いが大きいと聞いており、X-25に数種のインシュレータやスパイクを試しましたがVRDS-25XSの面影を見ることは出来ませんでした。
(どなたかX-25をVRDS-25XSライクに鳴らしている方おられましたらご一報ください。)

 
結論
どちらを買うか迷っているならという前提ですが、
スムーズで芯の細いマイルドな音を好む方、これまでのTEAC・ESOTERIC系の音色がお好きでない方にはX-25を、
クリアで鮮明、ハイスピードを好む方、トランスポート使用を考慮している方、コストパフォーマンスを重視する方にはX-30をお奨めします。

何れにしろ一聴の価値があるので、ぜひ聴いて(比べて)みて下さい。
 
もうひとつの結論
X-25はVRDS-25XSの後継機種にあらず!です。
 
追記
X-30,X-25の内部を一部ですがご覧いただけます。
X-30内部全体 117KB
X-30ピックアップ部の後(全体図:真ん中上) 89.3KB
X-25内部全体 127KB
X-25ピックアップ部の後(全体図:真ん中上) 103KB
30/01/2003